近年、心疾患患者の生命予後は腎機能により大きく影響を受け、腎機能障害患者の主要な死因は心血管病であることが明らかにされ、心腎連関という概念で注目を集めている。われわれは最近、腎不全患者における可溶性Flt-1が動脈硬化病変の増悪に寄与しており、可溶性Flt-1の投与で改善しうることを発見した。まず、sFLt-1ノックアウトマウスの検討を行い、組織の免疫染色において肺、心臓、筋肉においてCD31陽性血管とαSMA陽性血管が増加していることを見出した。また、sFlt-1ノックアウトマウスの腹腔内マクロファージと血中のモノサイトのRT-PCRによる検討では、腹腔内マクロファージではMCP-1が上昇しており活性化が示されたのに対して、血中モノサイトはMCP-1の上昇を認めず明らかな活性化を認めなかった。また、動脈硬化促進的に働くとされるCD11b陽性Ly6c陽性細胞のFACSによる検討では、正常群とノックアウトマウス群に差を認めなかった。このことは慢性腎不全においてsFlt-1が低下しており、相対的にPIGFが活性亢進していると考えているが、その影響はモノサイトに直接作用するというよりは、血管内皮細胞に直接作用した後にモノサイトが内皮下に誘導され、動脈硬化巣内で活性化されると考えている。また、われわれはsFlt-1アポEダブルノックアウトマウスを作成し、オイルレッドO染色でマウスの動脈硬化病変について免疫組織化学で検討した。ダブルノックアウトマウスの抗脈硬化巣はアポEノックアウトマウス群に比して、有意に増悪をしていた。さらに大動脈弁レベルの動脈硬化病変の検討でも動脈硬化巣の範囲はノックアウトマウス群で有意に増加していた。このことはsFlt-1が腎不全合併動脈硬化症の発症に重要であることを表している。
|