研究課題
心不全患者は、貧血を高率に合併する。一方、貧血が心不全の発症・増悪因子になりうることはよく知られている。しかし、心不全患者における貧血の成因について、その分子機構は解明されていない。我々は、貧血と心不全が互いに増悪しあうという観点から、貧血、特に鉄欠乏性貧血が心機能に及ぼす分子機構を明らかにした(Naito Y et al. Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2009)。この検討から、鉄欠乏性貧血による心機能低下に対し造血ホルモンであるエリスロポエチン(EPO)が心保護的に作用し、長期間貧血が続くと心臓におけるEPO受容体発現の亢進も認められ、心臓における内在性EPO-EPO受容体を介したシグナル伝達系が貧血合併心に重要な役割を果たしていることが示唆された。一方、アンジオテンシンIIによる内因性EPO生成促進作用が報告され、心不全治療に不可欠なレニン・アンジオテンシン系抑制薬(RAS抑制薬)によるEPO生成抑制が懸念される。本研究は、我々が発見した貧血合併心不全の分子機構において、心臓における内在性EPO-EPO受容体を介したシグナル伝達系が心保護に作用するのか、心不全治療に不可欠なRAS抑制薬であるアンジオテンシンII受容体拮抗薬が心不全合併貧血の憎悪因子なのか、などの問題をノックアウトマウスを用いた実験より検討し、患者さんに貢献するための研究基盤の確立を目指す。EPO受容体ノックアウトマウスを用いた検討よりご鉄欠乏による貧血合併心において心臓の内在性EPO-EPO受容体を介したシグナル伝達系が心保護に作用していることが示された。一方、アンジオテンシンII受容体(la型;ATlaR)ノックアウトマウスを用いた検討では、鉄欠乏による貧血合併心において腎臓ATlaRを介したEPOが心保護に作用していることが示唆された。以上より、心不全・貧血連関ネットワークにおいて腎臓ATlaR-EPO-心臓EPO受容体を介した経路が心保護に作用していることが示された。
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