研究概要 |
我々はヒト心不全症例において、病態形成に樹状細胞が関与しているかどうかを明らかにするため、まず久留米大学病院心臓・血管内科に入院となった急性心不全症例の末梢樹状細胞(DC)の数と、活性化マーカー(CD40,CCR7)の計測を行い対象群と比較した。 入院時、急性心不全症例では対象群と比較し著明にDC数は減少しており、さらに活性化マーカーが上昇していた。心不全加療後、DC数と活性化マーカーは改善していた。DC数の変化は、心機能の指標であるBNPやEF、また心筋障害の指標であるTroponin Tと相関を認めた。さらに心不全治療後もDC数の改善が乏しい群では、その後半年間で心不全の再発が有意に多かった。 次に我々はマウスを用い、DCに直接心筋特異的蛋白を認識させることで心不全が誘発されるか検討を行った。マウスの骨髄細胞をG-CSF存在下に培養し、90%以上の純度で樹状細胞の培養が可能となった。このDCを培養した9日目にmouse myosin heavy chainαペプチドでパルスを行ない、LPSとCD40抗体で刺激し樹状細胞に抗原として認識させたうえでマウスに投与すると、1週間後には心筋にリンパ球を中心とした炎症細胞浸潤を認めた。さらに4週間後には心重量の増加が認められ自己免疫性心不全を発症していた。 以上の結果より、心不全の病態形成にDCが関与している事が示唆された。
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