研究概要 |
申請者は免疫反応の中心を担う「樹状細胞(Dendritic cell;DC)」にまずfocusをあて、ヒト心不全症例での樹状細胞の動態の検討を行なった。急性心不全症例では対象群と比較し著明にDC数は減少しており、さらに活性化マーカーが上昇していた。心不全加療後、DC数と活性化マーカー(CD40,CCR7)は改善していた。DC数の変化は、心機能の指標であるBNPやEF、また心筋障害の指標であるTroponin Tと相関を認めた。さらに心機能や心筋障害の指標とも相関し、さらに予後とも関連することも報告した(Int J Cardiol.2011;147:258-264)。 次にマウスにおいて、DCをG-CSF下に培養した後に心筋特異的蛋白を抗原認識させ投与すると、心筋に炎症細胞浸潤が起こり自己免疫性心不全を発症することも明らかにした。そこでこのマウスの樹状細胞をvitroにて培養し、LPSを加えて活性化させる際にSimvastatinを前投与したところ、樹状細胞の活性化マーカー、及び炎症性サイトカインの著明な抑制を認めStatin投与による樹状細胞の活性化抑制の可能性が示唆された。次に先の自己免疫性心不全モデルマウスにSimvastatinを前投与して心不全を誘発させると、心筋炎症の程度の低下、心不全の改善を認めた。 以上の結果より、心不全の病態形成に炎症を介した樹状細胞の関与が示唆され、Statin投与により樹状細胞の活性化を抑制し、炎症を抑制する事が心不全治療の新たな標的となりうる事が示唆された。
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