前年度に帝京大学薬学部との共同研究によってバブルリポソームの作成に成功、ビーグル成犬に全身麻酔下にバブルリポソームは心腔内で再現性よく心エコーによる描出を確認した。心筋虚血/再灌流後、再灌流時に血管内皮に物理的障害や局所炎症が生じることが知られている。イヌ虚血/再灌流モデルを用いてこのような受動的な機序によるバブルリポソームの集積が起こり得るか、またもし起こるとすれば心エコーによる描出可能かについて検証を行った。しかしこのような受動的な起点では心筋梗塞部位におけるバブルリポソームの集積は認めらなかった。そのため将来のヒトへの応用も考慮し検討を重ね抗体修飾に比較しペプチドによる修飾が安全性の面から有利に働くと考察した結果、帝京大学薬学部と共同研究を行いリポソーム表面にRGDペプチド(Arg-Gly-Asp)修飾を行った表面修飾型バブルリポソームの実験を施行することとなった。このRGDペプチドは血栓上の細胞接着因子(インテグリンα_vβ_3)に特異的に結合する機能を有している。またインテグリンも虚血/再灌流後内皮の早期に血管内皮細胞に出現することがしられている。帝京大学薬学部との共同研究の結果、このGDペプチド(Arg-Gly-Asp)修飾を行った表面修飾型バブルリポソームを入手した。また当施設で動物実験モデルにおいてはビーグル成犬に全身麻酔下において左心房内を一定時間結紮し左心耳内に血栓を作成することに成功した。この左心耳血栓モデルにRGDペプチド(Arg-Gly-Asp)修飾バブルリポソームを投与した結果、エコー上の左心耳血栓の描出が鮮明に可能であった。心房細動患者などに多くみられる心房内血栓は脳塞栓症の強いリスクファクターである一方、通常の心エコーでは描出が困難であることが臨床上の課題であった。本研究結果がさらに動物実験での再現性確認などを経て臨床応用なされることが今後期待される。
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