経緯:当初の研究計画に基づきイヌ虚血・再灌流モデルにて心筋虚血/再灌流後における再灌流時の血管内皮に物理的障害や局所炎症による受動的機転によるバブルリポソームの集積、エコーでの虚血部位同定を期待して実験を行ったが、このような受動的な機転ではバブルリポソームの集積は認められないばかりか、心筋とバブルリポソームのコントラストも不鮮明であった。ただこの実験において心内腔とバブルリポソームのコントラストは良好でありこのような内腔の構造物質のイメージングにはバブルリポソームは有効に働く可能性が示唆された。そのため以下のような検討を追加して行った。 免疫修飾型バブルリポソームを用いた新しいエコー左心耳内血栓診断方法の開発 背景:左房左心耳血栓の存在は脳梗塞の発症リスクに関与することが広く知られているが、左心耳血栓は不定形であり従来の経胸壁心エコーでは診断自体が困難であった。リポソームは様々な物質の内封が可能なナノ粒子であり、また表面修飾を行うことで臓器特異的な集積が可能となる。バブルを封入することでエコーによる可視化が可能となるが、このバブルのリポソームへの封入も可能である。RGDペプチドは特定の細胞や血栓上に存在する細胞接着因子(インテグリンαvβ3)に特異的に結合する機能を持つ。今回、我々はリポソーム表面をこのRGDペプチドを修飾させたバブルリポソームを用いて血栓の可視化が可能であるか?について検討を行った。 方法:RGDペプチドはreversephase evaporation vesicle(REV)方法を用いて精製した。麻酔開胸犬を用いて左心耳の結紮を2時間にわたって行った(n=4)。 結果:生理食塩水投与によっても血栓の存在は不明瞭であったが、RGDペプチド修飾バブルリポソームを静脈投与後、鮮明にエコー輝度の高い血栓の存在を確認し得た。また組織学的に血栓であることを確認した。 結論:RGDペプチド修飾バブルリポソームと心エコーの併用によりイヌモデルにおいて左心耳内血栓は明瞭に観察可能であった。エコーと免疫修飾型バブルリポソームは組織学的な診断情報として有用な情報をもたらす可能性がある。
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