本研究は、肺癌治療において大きな問題となっている上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)に対する耐性化を、末梢血中から回収した循環腫瘍細胞(CTC)における耐性化遺伝子変異の同定によって判別し、その結果に基づいて適切な治療薬を選択する肺癌個別化治療の開発を目的としている。 初年度は、パイロット試験としてEGFR-TKI耐性化を来したと想定される肺癌患者から得た末梢血中から、Cell Tracksオートプレップ(オーソ・クリニカル・ダイアグノスティック社)にてCTCを回収することを試みた。すなわち、EGFR-TKIゲフィチニブ治療を長期間続けた後に画像上の増悪を認めた患者から文書同意を得て20mlの血液を採取しCTCの測定を行った。その結果、7.5mlあたり数個のCTCが確認され、上記システムによって進行肺癌患者におけるCTC測定が可能であることを確認した。その後、同じ末梢血から回収されたCTCのDNAを抽出し、それらからPNA-LNA PCRクランプ法にて耐性EGFR遺伝子変異T790Mを同定することを試みた。同患者は上記採血後に行った異なるEGFR-TKIエルロチニブによる治療が臨床的に奏効したことから、T790Mは陰性であることが予想されたが、回収されたDNA量が少なく解析が困難であった。 現在、より多くのCTCを回収すべく上記Cell Tracksオートプレップシステムの改良を試みるとともに、より多くの肺癌患者における本治療戦略の妥当性を検証するための臨床試験プロトコールを計画している。
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