研究概要 |
肺血管平滑筋増生を特徴とする肺血管リモデリングは肺高血圧症に共通して認められる病理所見である。肺高血圧症の発症機序は依然として不明な点が多いが、二次性肺高血圧症の多くが自己免疫性疾患、HIV感染症などに合併して発症することから、何らかの免疫学的機序が関与していることが示唆されている。 近年、抗原誘発性肺血管平滑筋増生の発症にTh2型免疫応答が関与していることが示された。一方我々はこれまでにIL-17 familyに属する新規サイトカインであるIL-25がTh2細胞依存的なアレルギー性気道炎症の増悪に関与することを報告した(Tamachi et al., J Allergy Clin Immunol. 2006)。しかし、IL-25が肺血管平滑筋増生に関与するか否かは不明である。そこで本研究ではIL-25の肺血管平滑筋増生における働きを検討した。 卵白アルブミン(OVA)で感作したC57BL6マウスにOVAを反復吸入投与したところ、既報にあるように、肺動脈周囲への炎症細胞浸潤とともに肺血管周囲平滑筋の増生が生じることが確認出来た。そこで抗原誘発性肺血管平滑筋増生の場においてIL-25が発現しているか否かを定量的RT-PCR法により検討したところ、OVAを反復吸入投与したマウスの肺では、コントロールマウスに比較してIL-25が強く発現していることが明らかとなった。さらにIL-25の肺血管平滑筋増生における働きを検討するため、IL-25に対する中和抗体を腹腔内投与し肺血管平滑筋増生に対する働きを検討したところ、抗IL-25抗体を投与されたマウスでは肺血管平滑筋増生が有意に抑制されることが明らかとなった。また、肺特異的にIL-25を産生するトランスジェニックマウス(CC10 IL-25マウス)を作製し、IL-25過剰発現の作用を検討したところ、CC10 IL-25マウスでは肺血管平滑筋増生を自然発症することが明らかとなった。以上より、肺血管平滑筋の増生にはIL-25の持続的産生が重要であることが示唆される。 平成23年度は、肺血管平滑筋の増生におけるIL-25の標的細胞の同定と、その分子機構の解明を計画している。
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