肺動脈平滑筋増生を特徴とする肺血管リモデリングは肺高血圧症に共通して認められる病理所見である。近年、抗原誘発性肺動脈平滑筋増生の発症にTh2型免疫応答が関与している可能性が示唆されたが、肺動脈平滑筋増生におけるIL-25の働きは依然不明であり、本研究ではその解明を目的とした。 卵白アルブミン(OVA)で感作したC57BL/6マウスにOVAを反復吸入投与したところ、肺動脈周囲への炎症細胞浸潤と肺動脈周囲平滑筋の増生とともに、肺局所においてIL-25の発現が認められた。肺動脈平滑筋増生におけるIL-25の働きを明らかにするため、OVAで感作したマウスに抗IL-25中和抗体を投与し、その後OVAを反復吸入投与し肺動脈平滑筋増生への影響を検討したところ、抗IL-25中和抗体投与群において肺動脈平滑筋増生の減弱が認められた。さらに肺特異的にIL-25を発現するトランスジェニックマウス(C57BL/6CC 10 IL-25マウス)を作製し、IL-25過剰発現の影響を検討したところ、C57BL/6CC 10 IL-25マウスでは肺動脈平滑筋増生の自然発症が認められた。 近年、IL-25がNKT細胞に作用しIL-4、IL-13の産生を誘導することが報告された。そこで本研究では、肺動脈平滑筋増生におけるIL-25-NKT細胞経路の働きを明らかにするため、C57BL/6CC 10 IL-25マウスとNKT細胞欠損マウスを交配しC57BL/6CC 10 IL-25NKT細胞欠損マウスを作製し肺動脈平滑筋増生への影響を検討した。その結果、C57BL/6CC 10 IL-25NKT細胞欠損マウスでは肺動脈平滑筋増生の減弱が認められた。以上より肺動脈平滑筋増生の発症にはIL-25-NKT細胞経路が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
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