研究概要 |
特発性肺高血圧症における遺伝子異常としてTGF-(8)ファミリーの一つBMPシグナルの異常が明らかとなっているが、如何にこのシグナル異常が病態と関連するのかいまだ十分に明らかになっていない。本研究はこの疾病の病変の首座である肺動脈血管平滑筋細胞や血管内皮細胞におけるBMPシグナル下流のシグナル伝達分子Smad1,Smad5の結合部位を、次世代シーケンサーを用いたChIP-seq法による網羅的解析により同定して、病態へのBMPシグナルの関与を明らかにすることを目的としている。平成23年度は肺動脈血管平滑筋細胞及び血管内皮細胞を用いたSmad1/5のChIP-seqデータをもとに同定した病態に関与している可能性のある新規の標的遺伝子について、その役割につきsiRNAを用いた検討を行った。その結果BMP刺激による肺動脈平滑筋細胞の分化マーカー発現がこの遺伝子のノックダウンにより抑制されることを見出した。siRNAのトランスフェクションによる非特異的な作用も否定できないため、この遺伝子の阻害剤の投与を行ったところ、BMP刺激による分化マーカー発現が抑制され、siRNAによる検討と合致する結果であった。またこの遺伝子の産生する細胞外分泌因子をELISAで定量評価するとBMP刺激により増加することが確認された。以上のことからこの遺伝子がBMPシグナルによって直接誘導され、肺動脈平滑筋細胞の分化を促進する因子を分泌し、cell autonomousにBMPの作用に対してfeed-forwardに働いていることが示唆された。
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