研究概要 |
肺線維症は肺の線維化が慢性的に進行する難治性疾患であり、病態生理の解明と新規治療法の開発が急務である。ロイコトリエン(LTs : CysLTs, LTB_4)は炎症性メディエータとしてのみならず線維化への関与も示唆されているが、肺線維症における役割は不明である。本研究は急性期及び慢性期の肺線維症モデルマウスを用いて肺線維症におけるLTsの役割を明らかにし、肺線維症の有効な治療法の確立を目指している。 前年度の平成22年度には、以下の2点について明らかにした。(1)急性期モデルとしてブレオマイシンモデルにおいてCysLT1型受容体(CysLT_1R)拮抗薬は抗線維化効果を持つこと、(2)慢性期モデルであるシリカモデルの経時的解析よりCysLTsが慢性期の線維化においても重要な役割を果たしている可能性を示した。 最終年度である今年度は、慢性期モデルであるシリカモデルにおけるCysLT_1R拮抗薬の効果を検討した。シリカ処置3日前から2週間後までの急性期のみの投与と、シリカ処置3日前から10週間後までの慢性期までの投与を実施した。その結果、CysLT_1R拮抗薬の10週間投与では線維化が有意に抑制されていたが、2週間では抑制されなかった。また、10週間投与においてはCysLTsの産生増加が抑制されていたが、一般的な線維化の誘導因子であるTNF-α、TGF-β1の増加は抑制されなかった。 以上の結果から、CysLTsが肺線維症の発症進展に重要な役割を果たしていることが示された。特に線維化の発症よりはむしろ慢性期の進行性線維化にCysLTsがより強く関与していることが示唆された。またCysLT_1R拮抗薬の肺線維症治療薬としての可能性も示され、その基礎・臨床医学的価値は極めて高いと考えられる。 また、研究実施計画の目的をほぼ達成することができた。
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