研究課題/領域番号 |
22790766
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
市川 朋宏 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (20405450)
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キーワード | 難治性喘息 / 気道リモデリング / MMP / テオフィリン / 窒素化ストレス / NF-kB / TGF-β1 / HDAC |
研究概要 |
難治性喘息患者数は全喘息患者の5-10%を占め、難治性喘息の病態解明は医学的意義はもとより、医療資源抑制への貢献という点で重要な研究課題である。本研究の目的は肺の構成細胞である肺線維芽細胞と気道上皮細胞に着目し、酸化・窒素化ストレスやTLR3の活性化とMMPやTIMPの産生との関わりやそのメカニズムの解明、さらには窒素化ストレスと難治性喘息におけるMMP/TIMPバランスの不均衡との関連の解明を目的とする。平成23年度も昨年に引き続き、強力な窒素関連化合物であるパーオキシナイトライトと肺線維芽細胞を用いて、リモデリングに与える影響について検討し、パーオキシナイトライトにより肺線維芽細胞からのMMP-2/9の活性化がNF-κBの経路を介して、促進されることを示した。またパーオキシナイトライトによりヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)2活性が低下し、HDAC2活性を促進する作用を持つテオフィリンの投与により、パーオキシナイトライトのMMP分泌促進作用が抑制されたことを示した。 平成24年度はさらにパーオキシナイトライトのMMP活性化経路の詳細を検討し、下記の結果が得られた。 1)TGF-β1はリモデリングの形成に重要なメディエーターであるが、パーオキシナイトライトにより肺線維芽細胞からのTGF-β1の分泌が促進された。 2)NF-κB阻害薬であるMGI32を前処置しておくことで、パーオキシナイトライトによる肺線維芽細胞からのTGF-β1分泌促進作用が抑制された。 3)TGF-βの中和抗体を前処置しておくことで、パーオキシナイトライトによる肺線維芽細胞におけるMMP-2/9の活性化促進作用が抑制された。 4)テオフィリンの投与にてパーオキシナイトライトによる肺線維芽細胞からのTGF-β1分泌促進作用が抑制された。 以上より窒素化ストレスがNF-κBとTGF-β1の経路を介してMMPの活性化を促進すること、テオフィリンがリモデリングの抑制効果を持つことを示し、喘息の難治化のメカニズムの解明や治療に応用できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺の構成細胞である線維芽細胞を用いて、窒素化ストレスと難治性喘息の関わりについて、リモデリングの観点から、in vitroの実験系で、その関連性を示すことができ、さらに治療の可能性についても示すことができ、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
喘息の難治化については、今後喫煙やウイルス感染による増悪の観点から、それらのリモデリングに与える影響を検討する予定である。具体的には線維芽細胞を用いて、たばこ抽出液やtoll like receptor 3のリガンドであるpoly I:Cを曝露することにより、MMPの分泌や活性化に与える影響を検討する。その他の因子の可能性についても検討する。また窒素化ストレスがリモデリングに与える影響については示すことができたが、窒素関連化合物の産生経路についてもできれば検討したいと考えている。これについてはNOの合成酵素である誘導型NO合成酵素(iNOS)の発現を線維穿細胞や気道上皮細胞などで、上述した刺激系で検討する予定である。iNOSとMMPの分泌や活性化との関連の有無についても検討を行う予定である。
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