研究概要 |
昨年度に引き続き、肺線維芽細胞を用いてmatrix metalloproteinase(MMPs)の分泌・活性化に関して以下の検討を行った。本年度はウイルス感染のモデルとしてtoll like receptor (TLR)3のリガンドであるpolyinosinic:polycytidylic acid (poly (I:C))を肺線維芽細胞に投与し、MMP-1,2,9の分泌及び活性化に及ぼす影響とそのメカニズムをザイモグラフィー法とウエスタンブロッティング法にて検討した。 poly (I:C)はMMPの分泌と活性化を促進した。さらにpoly (I:C)は誘導型NO合成酵素(iNOS)の発現を誘導し、その結果細胞からのNOの分泌が亢進した。iNOS阻害剤を投与するとpoly (I:C)のMMP発現亢進作用が抑制された。 さらに、NF-κBとIRF-3の関与についても検討した。poly (I:C)はNF-κBの核内移行を促進し、NF-κB阻害剤によりpoly (I:C)によるMMPの発現亢進が抑制された。またpoly (I:C)はIRF-3の核内移行も促進し、IRF-3のノックダウンによりpoly (I:C)によるMMP産生及び活性化促進作用が抑制された。同様に、これらの転写因子を阻害することで、poly (I:C)によるiNOSの発現も抑制された。 以上より、TLR3の活性化がiNOSの発現を介して肺線維芽細胞におけるMMPの分泌・活性化を促進することが示された。さらにMMPの発現はNF-κBとIRF-3を介することもが示された。これらのシグナリングを制御することでウイルス感染による肺構造の破壊とそれに引き続く呼吸機能の低下を抑制できる可能性が示唆された。お 以上の研究成果を論文として英文学術誌へ投稿準備中である。
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