研究課題
近年、全世界においてアレルギー性疾患が増加している一方で、先進国では食生活の変化がもたらしたメタボリック症候群、糖尿病を含めた生活習慣病に起因する二次性疾患や死亡の増加が問題となっている。呼吸器疾患においても肥満は喘息の増悪因子であり、難治性喘息患者においては、ステロイド薬の全身投与により二次的に糖尿病を含めた生活習慣病が発症する場合もある。そのような背景のもと本研究では、アレルギー性疾患と高血糖、メタボリック症候群の関連性を解明することを目的とした。高血糖下では血中に糖化タンパクの形成が促進し、全身性の炎症につながることが知られている。そこで本年度は、まず糖化タンパクの1種であるAGE-BSAをマウス尾静脈から全身投与し、気道炎症を解析した。AGE-BSAを投与したマウスとコントロールマウスとの間に、BAL総細胞数BAL細胞分画、アセチルコリンによる気道過敏性において有意な差を認めなかった。次にマウス肺において、AGE-BSAのレセプターであるRAGEの発現を解析した。肺組織のPCR、免疫染色、フローサイトメトリーにより、RAGEの発現を認めた。免疫染色の結果から、気道上皮細胞にRAGEの局在を認めた。また、培養ヒト気道上皮細胞をAGE-BSAで刺激するとRAGEの発現が増強した。以上、気道上皮細胞にRAGEの発現を認めたが、AGE-BSAの全身投与による気道炎症の増悪は認めなかった。RAGEには複数のリガンドが存在し、炎症への関与が示唆されていることから、来年度は他のリガンドの気道炎症への影響を解析すること、気道上皮細胞および炎症細胞のRAGE発現をより詳細に解析し、RAGE刺激による細胞動態の変化を解析する方針としている。
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Allergology International
巻: 59(4) ページ: 417-419