オートファジーによる細胞内タンパク質分解系は生理的な役割だけでなく、老化や変性疾患などの様々な病態と関連する。喫煙が原因で、肺上皮細胞の老化をきたす慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease : COPD)においても、オートファジーが病態形成に関与していると考えられている。しかしながら実際どのように関与するかには、一定の結論が出ていない。そこで我々は、COPD病態での気道上皮細胞老化亢進において、オートファジーの果たしている役割を明らかにすることを目的として検討を行った。手術肺より分離した正常気道上皮細胞を用いて、cigarette smoke extract (CSE)刺激にて細胞老化を誘導し、COPDのin vitroのモデルとした。CSE刺激により、オートファジーは一過性に亢進後低下し、オートファジーの低下に伴い、ユビキチン化蛋白、P62が増加し、senescence-associatedβgal(SAβgal)染色陽性の老化細胞が増加した。一方、mTOR阻害剤により、オートファジー機能をさらに亢進させると、CSEによる細胞老化亢進は抑制された。喫煙刺激を受けた細胞内に蓄積した傷害蛋白は、本来オートファジーの亢進による細胞内クリアランス機能により分解される。以上検討より、オートファジー機能亢進が不十分であり、細胞内にユビキチン化蛋白を含む傷害蛋白異常蛋白質の蓄積することが細胞老化亢進を介してCOPDの病態に関わる可能性が示唆された。
|