本研究は肺線維化におけるDNAのメチル化の関わりを明らかにすることを目的としている。本年度はin vitro研究を中心に行う計画であったが、in vivo研究も同時に実施した。 in vitroでは、TGF-betaのプロモーター領域にメチル基を付加したオリゴDNAを用いてプロモーター活性を測定したところ、付加していないものに比べてその活性が増加することが分かった。現在はこの領域に結合する転写因子の同定を行っているところである。また、筋線維芽細胞でのDNAメチル化酵素の1つで癌組織などで増加していることが報告されているDNMT3Bの発現を解析した結果、筋線維芽細胞を不活化させると本酵素のタンパク質レベルが低下する事が分かった。このことから、筋線維芽細胞の活性状態にDNAメチル化が関わっている可能性が示唆された。 in vivoでは、マウスにブレオマイシンを経気道的に投与し、2週間後に線維化肺を回収した。組織からライセートを調整し、DNMT3Bのタンパク質レベルをウェスタンブロット法によって測定した。その結果、ブレオマイシン非投与群との間に差が認められなかった。慢性炎症や癌などでDNAメチル化が起きている事から、DNAのメチル化は生体内においては比較的長期間かけて起こる現象であることが考えられた。このため、ブレオマイシン投与後2週間での肺には差が認められなかったと考えられた。そこで新たなモデルとして定期的なシリカ投与によって肺に慢性炎症を誘起させたマウスを作成し、実験に用いることとした。実際に本マウスの肺で炎症性の細胞が持続的に増加していることが確認できた。今後は本モデルでの肺のメチル化動態を解析していく計画である。
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