研究概要 |
本年度は2種のモデルマウスの作成を中心に研究を進めた。 線維化のモデルとしてシリカを週に一度、6ヶ月間点鼻投与したマウスを作成した。投与によって肺の各所で炎症性の細胞が多数集積しており、弱い線維化が起きていた。このマウスから肺組織のライセートを調整し、DNAメチル化酵素DNMT3A、3B各々をウェスタンブロットにて測定した。その結果、DNMT3Aは検出されなかったが、3Bはシリカ投与群で増加していた。このことから、長期の炎症とそれに伴う組織の線維化にはDNAのメチル化が関連していることが示唆された。詳細はDNAのメチル化部位に関しては今後検討していく予定である。 もう1つのモデルとしてDNA-高メチル化マウスを作成した。既報(The FASEB Journal 2007, 21, 3380-3385)に基づき餌にコリン、ベタイン、亜鉛、L-メチオニン、葉酸、ビタミンB12を混和し、交配前から授乳終了まで母マウスに与え、産まれてきたマウスを実験に用いた。本実験はマウスの遺伝子が完全に同じである必要があったため近交系であるc57BLK/6Nマウスを用いた。 肺のゲノムDNAを回収し、メチル化レベルをELISA法によって測定した。コントロールマウスも比較的高値を示し、高メチル化食投与による有意な増加は検出できなかった。線維化において重要であるTGF-βやコラーゲンなど個々の遺伝子のプロモーターにおけるメチル化レベルの解析が今後の課題である。 DNA-高メチル化マウスの線維化レベルを正常マウスと比較する目的でブレオマイシンを投与した。しかし、これまで使用していたCD1マウスに比べc57BLK/6Nマウスはブレオマイシン感受性が非常に低かったため通常のブレオマイシン濃度では全マウスで線維化が起こらなかった。このため、ブレオマイシン投与の条件検討を実施した。今後は決定した条件を用いて再度線維化作成と解析を行う予定である。
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