喘息反応には、即時型喘息反応(IAR)と遅発型喘息反応(LAR)があることが知られている。IARの発症機序についてはよく理解されているが、LARについては様々な説があり不明な点も多い。本研究は、LARの発症機序の解明と新規治療ターゲットの同定を目指している。LARの主要な症状の一つである気道閉塞は、主に気管支平滑筋細胞の収縮によるものと考えられているが、しかしながら、T細胞が気管支平滑筋細胞の収縮を引き起こすことができるかどうかについては明らかになっていない。そこで我々は、当研究室で樹立したマウスT細胞クローンを用いて、活性化T細胞クローンの培養上清中に気管支平滑筋細胞収縮因子があるかどうか、気管支平滑筋細胞包埋コラーゲンゲルを用いて検討した。 抗CD3抗体、及び抗CD3/CD28抗体で刺激したT細胞クローンの培養上清を気管支平滑筋細胞包埋コラーゲンゲルに作用させたところ、マウスに移入・抗原チャレンジの施行によりLARを惹起するT細胞クローンの培養上清を用いた場合にのみ、ゲルの実収縮率は時間依存的に増加した。一方で、LARを惹起しないT細胞クローンの培養上清、また、刺激なしのT細胞クローンの培養上清を用いた場合では、ゲルは収縮しなかった。以上の結果から、T細胞クローンの気管支平滑筋細胞包埋コラーゲンゲル収縮活性は、LARの惹起と関連があることが明らかになった。T細胞は、活性化により気管支平滑筋細胞を収縮させる物質を産出し、LARの発症に対して大きな役割を担い得ることが示唆された。
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