Paraoxonase-1(PON1)の腎臓内での発現部位を確認するため、進行性腎不全モデルであるラット5/6腎摘モデルにおいて、PON1抗体の免疫染色を施行した。Shamにおいて発現を認めなかったが、腎摘モデルで腎細動脈内皮に強い発現を認めた。腎摘ラットにアンジオテンシンII受容体拮抗薬を投与した群では発現が減弱していた。よって、PON1は腎血管障害に関連して細動脈内皮に発現する可能性が示唆された。また、末期腎不全患者481人のPON1遺伝子多型と予後との関連を検討した。血清Paraoxonase活性と強い関連を示す、missense SNP (rs662)の遺伝子多型タイピングを行ったところ、rs662 A/A群、A/G群、G/G群の3群間において、生存率に有意差を認めなかった。心血管死と全死亡に分けて検討したが、同様の結果であった。末期腎不全患者の死亡に関連する因子は多因子であり、PON1単独での生命予後に対する関連を今回の検討で見出す事は出来なかった。よって、今後はより早期の慢性腎臓病患者を対象として、PON1と慢性腎臓病の進行との関連を検討する必要があると考えられた。それにより、慢性腎臓病の各ステージにおける、PON1の関わりを明らかにできる可能性がある。一般住民における検討では、PON1遺伝子多型が腎機能低下とアルブミン尿発現に関連している事を示せた。今後、軽度から中等度の腎機能低下患者におけるPON1と腎障害進行との関連を検討するため、腎臓病入院患者ならび通院患者を対象とし、Paraoxonase活性ならび酸化脂質マーカーの測定し、患者背景や臨床データとの関連を検討する予定である。また、ヒト腎生検標本でのParaoxonase-1の発現や局在の変化について検討する予定である。
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