末期腎不全患者481人のうちデータ欠損を除いた317名を対象としてPON1遺伝子多型と患者背景ならび予後との関連を検討した。血清Paraoxonase活性と強い関連を示す、missense SNP(rs662)の遺伝子多型タイピングを行ったところ、rs662A/A群、A/G群、G/G群の3群間において、生存率に有意差を認めなかった。心血管死と全死亡に分けて検討したが同様の結果であった。末期腎不全患者の死亡に関連する因子は多因子であり、PON1単独での生命予後に対する関連を今回の検討で見出す事は出来なかった。これらの結果をよって進行した腎機能障害患者においては、PON1は心血管病の発症や予後に与える因子として大きいものでない可能性が考えられた。以上の結果は、日本透析医学会学術集会にて発表を行った。より早期の慢性腎臓病患者を対象としてPON1の腎障害への関連を検討するため、入院治療を必要とした様々な原疾患による慢性腎臓病患者についてParaoxonase活性ならび酸化脂質マーカーとしてマロンジアルデヒドの測定を行った。現在までの横断的研究では有意な結果は得られていない。今後、さらなるデータの集積と追跡調査により縦断的研究を進め、PON1の腎障害進行や心血管病の発症との関連について解析を行っていく予定である。
|