[背景と目的]糸球体壁細胞は抗GBM抗体腎炎において頻繁に形成される半月体の主要構成細胞と考えられており、半月体形成が糸球体の尿路・血流を傷害し、腎機能の悪化につながると考えられている。しかし半月体形成機序については詳細は知られていない。本研究では半月体形成機序の第一ステップと考えられる糸球体壁細胞の増殖のメカニズムを明らかにすることを目的としている。 [研究結果]半月体形成性腎炎モデルマウスを作成し、増殖マーカーであるKi67の免疫染色で糸球体壁細胞での細胞増殖亢進を確認できた。これまでの培養細胞を用いた実験などから、半月体でも産生が増加しているコラーゲンが糸球体壁細胞の増殖を促進し、その背景に組織低酸素からP4HA1が誘導され、コラーゲン産生が促されているという機序を検証した。 組織でのsirius redを用いた非特異的コラーゲンの染色では増殖細胞とコラーゲン染色の間に相関関係は見られなかった。コラーゲンの型による細胞増殖の違いを検証するためにI型およびIV型コラーゲンの組織染色を行った。糸球体壁細胞周囲にコラーゲンの増殖は認めたが、この回で作成した動物は組織の線維化はごく軽度であった。疾患惹起7日目および28日目でも同様の結果であり、疾患を惹起する際に使用する血清量を増量する事で期待する程度の線維化を得られるようにした。この結果28日目にと殺した群で十分な線維化を伴う腎炎を惹起することに成功し、I型およびIV型のコラーゲン増殖と糸球体壁細胞の細胞増殖を認めた。このモデルを使用してコラーゲンの産生経路として働く、と期待したP4HA1のPCRを行ったが、P4HA1の増加は認めなかった。P4HA1がmRNAレベルでの変化が無くとも蛋白質レベルでの変化が起きている可能性も考慮して免疫染色も施行したがこちらもでもP4HA1タンパクの増加は確認できなかった。糸球体壁細胞の増殖に低酸素に基づくP4HA1の増加と引き続いて起こるコラーゲンの影響しているという仮説を考えていたが、P4HA1の産生は更新していなかった為、現在コラーゲンの産生刺激として別の経路の検討を行っている.
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