研究課題
腎尿細管の慢性低酸素は進行性腎障害の進展を司るfinal common pathwayである。転写因子HIF-1による低酸素応答は尿細管細胞の恒常性維持に必須である反面、HIF-1の過剰な活性化状態は腎線維化を惹起する。この観点よりHIF-1の発現及び活性を調節する因子の重要性が示唆されている。HIF-3はそのような代表的候補制御因子として提唱されており、本研究ではその発現・機能解析を行った。HIF-3α遺伝子の転写は低酸素によってHIF-1依存性に亢進し、プロモーター解析によってHIF-1の標的遺伝子であることが判明した。次にHIF-3αをクローニングし、培養近位尿細管細胞 (HK-2) に過剰発現させたところ、既知のHIF-1標的遺伝子のうち、lysyl oxidase (LOX) の低酸素誘導が最も顕著に抑制された。LOXプロモーターの解析を行ったところ、その上流にはHIF-3によって抑制を受ける部位が群をなして存在することが明らかになった。機能面において、HIF-3αは低酸素刺激によるE-カドヘリン消失を抑制するとともに細胞走化能獲得を阻止し、fibronectinなどの細胞外基質の発現も低下させた。よってHIF-3は上皮・間葉形質転換(EMT)を抑制する因子であることが示唆された。また、HIF-3による形質の大部分はLOXの抑制によって媒介されることも明らかとなった。最後に、各種腎線維化モデルにおけるHIF-3αの発現を免疫組織化学法により検討した。HIF-3αタンパクは片側尿管結紮(UUO)モデルや虚血・再灌流障害長期観察モデルなど、間質の線維化を特徴とする尿細管間質障害モデルにおいて強く発現することが明らかとなった。以上の研究により、尿細管上皮細胞における低酸素遺伝子発現応答の調節機構は腎線維化を抑制する重要な決定因子であることが明らかとなった。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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