研究課題
近年、WNK-OSR1/SPAK-NCCリン酸化カスケードの存在が明らかになるにつれ、PHAIIという特定の疾患だけでなく、この新しいカスケードが腎臓での塩分再吸収をどのように生理的に制御しているかに注目が集まってきている。本研究では、アルドステロンやアンギオテンシンIIによりOSR1/SPAKとNCCのリン酸化が制御されることから、生理的な生体内の塩分出納制御に重要であることを報告した(J Cell Sci. 2011,BBRC2010)。2011年には培養細胞とマウス腎臓において、1:インスリンの急性負荷がNCCを活性化するThr53/58とSer71のリン酸化を亢進すること、2:この急性インスリン負荷によるNCCリン酸化にWNK4とSPAKが関与している事をノックダウン細胞とノックアウトマウスを用いて明らかにした(Sohara E et al. PLoS ONE 2011)。元来、インスリン投与により腎臓での塩分再吸収が亢進する事はよく知られており、メタボリックシンドロームの塩分感受性高血圧の一因とされているが、その詳細なメカニズムは不明であった。申請者蘇原の発見は高インスリン状態における腎臓尿細管での塩分再吸収亢進のメカニズムの一つを明らかにし、WNKキナーゼが高インスリン血症と塩分感受性高血圧をつなぐ重要な鍵であることを示した。すなわち、生体内で高インスリン血症がおきるとInsulin-WNK-NCCのリン酸化カスケードが亢進することが、メタボリックシンドロームや肥満などの高インスリン状態における塩分感受性高血圧のメカニズムを本研究は明らかにした。
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