研究概要 |
腎疾患に対する再生医療の開発は、医学的のみならず医療経済的にも急務であるが、現在までのところ、ヒトES細胞(Embryonic stem cell,胚性幹細胞)やiPS細胞(induced pluripotent stem cell,人工多能性幹細胞)から試験管内で腎臓系譜の細胞を選択的に分化誘導する方法は確立されていない。この目的の達成のため本年度は、ヒトiPS細胞から腎臓を派生させる胎生初期の組織である「中間中胚葉」の細胞を分化誘導する方法の開発を行った。定量的PCR法による評価を用い、増殖因子の組み合わせ処理にて、ヒトiPS細胞から中間中胚葉の特異的マーカー遺伝子の一つであるOSR1の発現細胞を最も効率よく誘導する方法を開発した。また、核内転写因子であるOSR1陽性細胞を生存させたまま単離し、マイクロアレイによる遺伝子発現解析や移植実験を行うために、OSR1の遺伝子座に緑色蛍光蛋白(GFP)レポーターを相同組換え法にて導入するヒトiPS細胞株の樹立も開始した。既報にあるヒトiPS細胞201B7にターゲッティングベクターを遺伝子導入した薬剤耐性クローンを複数個樹立し、現在、相同組換えが起こっているクローンを選択している。これまでのところヒトES細胞やiPS細胞から中間中胚葉細胞を効率よく分化誘導する方法は確立されておらず、本研究の成果は腎臓をはじめとして副腎皮質や生殖腺など中間中胚葉由来臓器の再生研究の進展に大いに貢献することが期待される。
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