研究課題
シスチン尿症は、腎近位尿細管管腔側の1回膜貫通型タンパク質rBAT(SLC3A1)と12回膜貫通型タンパク質BAT1/bO,+AT(SLC7A9)の二つのサブユニットからなるヘテロ二量体型シスチントランスポーター(輸送体)の遺伝的変異による常染色体劣性の疾患である。シスチン再吸収輸送体の機能不全によりシスチンが多発性結石を形成し、重篤な腎機能障害に陥る。日本人の原因変異の約80%が輸送体C末端領域の1アミノ酸残基置換P482Lである。輸送体のC末端領域は基質輸送には直接関与しないと考えられており、むしろC末端領域の変異や欠損は細胞膜局在化の異常をもたらすとされている。ところがP482L変異体の場合、野生型同様に発現が細胞膜上に見られるにもかかわらず輸送活性を完全に喪失している。したがってP482L変異による病態発現は局在異常によるものではないと考えられるが、どのように輸送機能を損ない、病態発現に関わっているかはまったく不明であった。最近、研究代表者らは変異型C末端領域のみに結合するタンパク質HSP40hを同定した。この結合は病態発現に深く関与していることが示唆された。本研究は、この結合を切断し輸送活性を回復させるモデルペプチド配列を見いだし、ペプチドミメティック(ペプチド模倣)薬による本疾患の治療へ繋げることを目指した。まずペプチドによる輸送回復効果の評価を行うため、卵母細胞内でP482Lを発現させるとP482Lは輸送活性を失っていたが、P482LC末を含むペプチドを細胞内に導入したところ、輸送回復効果が見られた。また、ヒト疾患と同様の症状を示すP482Lノックインマウスの作成し、疾患モデル動物を作出した。その腎刷子縁膜を解析し、輸送活性は喪失しているが基質結合活性は保持されていることを見いだし、輸送喪失の機序を明らかにした。
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Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids
PMID:22132964 [PubMed-in process]