腎臓は尿管芽の周りに後腎間葉と呼ばれる前駆細胞集団が凝集し、糸球体、近位尿細管、遠位尿細管へと分化していくことで形成される。この間葉を増幅させ、特定の細胞腫へと分化させることは腎臓再生にむけて大きな意味を持つ。特に糸球体を構成するポドサイト(足細胞)は腎臓前駆細胞に由来する最終分化細胞であり、慢性腎不全の際、最初に障害を受けることが報告されていることから、足細胞の誘導法開発は臨床的にも非常に意義のあることだと考える。そこで本研究ではまず、足細胞に発現している転写因子群に着目し、レンチウィルスによる強制発現系を立ち上げ、後腎間葉の培養系での足細胞への分化転換に挑戦した。 高タイターのウィルス産生の条件検討を行っている間に、時期特異的足細胞特異的腎障害マウスの作成を行った。ポドシンプロモーター下にテトラサイクリンアクチベーター(podocin-rtTA)を繋げたトランスジェニックマウスと、テトラサイクリンアクチベーターに反応するプロモーター制御下にジフテリア毒素Aサブユニットを発現するマウス(tetO-DTA)をかけ合わせることで、それぞれの遺伝子をヘテロにもつ組織及びマウスはテトラサイクリンを培養液に添加or経口投与することで時期特異的に足細胞に障害を与えることができると考えられた。そこで経口投与による足細胞障害過程を発生期、成体期で観察したが、糸球体疾患が見られなかった。しかしながらE13.5からの後腎間葉の器官培養では、テトラサイクリンを培養液に添加することで、糸球体の発生が阻害された。現在個体内でのテトラサイクリンの有効濃度の条件を検討中である。
|