平成23年度は、アンジオスタチンによる腎保護作用機序の解明を目的として、in vivoイメージングシステムを用いた腎臓の血液動態の観察と血管内皮細胞に対するアンジオスタチンの作用機序をin vitroで解析した。 始めに、糖尿病性腎症における腎血管機能解析手法として、in vivoイメージングによる検討を行った。6週齢のラットを頸椎脱臼後、蛍光物質キナクリンと蛍光標識アルブミンを尾静脈より投与し、腎臓を背部より露出させ共焦点レーザー顕微鏡を用いて、腎臓の血液流動および糸球体での蛍光標識デキストランの漏出をタイムラプスで観察した。観察結果、キナクリン標識による血管や尿細管での血液および原尿動態は検出できたが、糸球体における血液ろ過過程は検出できなかった。糸球体の検出深度まで顕微鏡のレーザーが届いていないと考えられ、多光子共焦点レーザー顕微鏡下での観察を検討している。また、アンジオスタチンの生体内への移植では、Hisタグ標識アンジオスタチンを調製しスポンジゲルを用いて、腎皮質へと移植を行ったが、アンジオスタチンの分解が非常に早く、効果的な腎保護作用の検討は行えなかった。アンジオスタチンの安定化および産生効率の向上のためにも、アンジオスタチンの作用機序の解明と作用領域の同定が望まれる。次に、in vitro培養細胞系を用いて、アンジオスタチンによる内皮細胞障害保護作用の解析を行った。血管内皮細胞では炎症性サイトカインIL-1βにより、NOの産生に係わるeNOSの発現低下およびICAM-1、VCAM-1やMCP-1の発現増加といった内皮細胞障害が誘導された。IL-1βによるICAM-1やMCP-1の発現に、アンジオスタチンは影響を与えなかったが、eNOS発現低下はアンジオスタチン濃度依存的に回復した。また、その作用機序としてNF-κBの核移行をアンジオスタチンが阻害し、血管内皮細胞の障害を改善することを明らかにした。
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