研究概要 |
抗加齢遺伝子Sirt1の腎臓での作用のうち、特に近位尿細管(PT)Sirt1に注目し、検討を進めている。我々はナトリウム・リン共輸送体(Npt2)promoterを使用し、近位尿細管特異的Sirt1過剰発現マウス(Tg群)を作成し、これらのマウス(control=WT、Tg)を用い、CKDの内、特に、糖尿病性腎症(DN,Diabetic Nephropathy)の解析を進めた。 WT、TgにSTZ(50mg/kg/日ip.5日)および生食(control)投与した。WT+Sa1,WT+STZ,Tg+Sal,Tg+STZの4群で6カ月後の所見を比較した。pahetal epithelial cell(PEC)、visceral epithelial cell(VECすなわちpodocyte)、近位尿細管(PT)のSirt1発現を、腎laser microdissection、real-timePCR、免染で検討した。 アルブミン尿がTg+STZで有意に抑制された。Sirt1はWT+SalでPT、PEC、VECに発現し、WT+STZで低下した。Tg+STZではpromoter作用部位のPTでSirt1発現がSTZ投与3カ月で既に回復し、さらに6カ月後にはPEC、VECにおいても回復した。 DNの発症初期においては(Controlマウス)、まず近位尿細管のSirt1が低下する。その後、Sirt1低下がpodocyteに波及し、podocyteにおけるSirt1の発現も低下する。その結果podocyteのスリット膜形成分子が低下する。これにより、足突起の癒合・アルブミン尿が生じる。(これらの病態はSirt1Tgで抑制を認めた)。現在、Sirt1低下によるpodocyte機能異常のメカニズムを解明するため、更に詳細な検討を進めている。
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