研究概要 |
ラット腹膜中皮細胞、ヒト培養腹膜中皮細胞を含む様々な細胞腫を用いて、DNAアレイにより遺伝子を網羅的に検討した。腹膜中皮細胞に特異的である可能性のある遺伝子に着目した。この遺伝子に対する抗体を用いて細胞を標識し、分取した。 一方、免疫不全マウスを用いて、被嚢性腹膜硬化症(EPS)モデルマウス作成を試みた。まず、既報(Washida N et al, NDT2011)で我々が報告したモデルの作成を試みた。しかし、クロールヘキシジン腹腔内投与によりマウスは短期間に死亡したため、EPSモデルマウスの作成は困難であった。次に、メチルグリオキサールを腹腔内投与することによりEPSモデルマウスを作成することとした。こちらのほうは計30匹のマウスを使用した結果、約1/3の9匹でEPSモデルを作成することに成功した。 分取した再生腹膜中皮細胞は、増殖力が弱く、モデルマウスに1×10^5個/回/日を5回ずつ連日移植した。9匹のモデルマウスのうち、4匹は腹膜炎を引き起こし評価困難であった。残り5匹において腹膜形態を比較検討した。コントロールと比べ腹膜厚に明らかな有意差を認めず、細胞移植が効果的であるとはいえなかった。 この研究が成功しなかった原因について、まず再生した細胞の増殖力が弱く、十分な細胞数を獲得できなかったことがあげられる。腹膜中皮細胞特異的遺伝子の同定についてさらなる十分な検討を要する。またEPSモデルマウスも完成した時点から可逆的に効果を検証することは困難である可能性がある。EPSモデルマウスの予防効果を検討する予定である。
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