研究課題
IgA腎症の病態における糖鎖異常IgA1産生と免疫複合体形成機序を解明するために、今年度では、まずIgA腎症患者の末梢血および摘出された扁桃よりB細胞を抽出し、EBウイルスで不死化し、IgA1-およびIgG産生細胞株を樹立することに成功した(各n=10)。CpGを用いてTLR9の発現を増強させると、また、IL-6での刺激によって、IgA1の糖鎖構造・糖鎖修飾酵素の活性化やIgG産生細胞株での糖鎖異常IgA1特異的IgGの産生が亢進することが示され、粘膜での感染によって、これら免疫複合体を形成するIgA,IgGが産生されることが示された。実際に、これらの糖鎖異常IgA1と糖鎖異常IgA1特異的IgGが免疫複合体を形成することが確認され、ヌードマウスに連続投与したところ、血尿・蛋白尿が認められた。さらに電子顕微鏡所見では、糸球体上皮・内皮細胞障害が確認された本症における扁桃B細胞の役割を解明するため、2005年から2009年までに当院にて扁摘およびステロイドパルス療法が施行されIgA腎症患者25名を対象とした。扁摘前・扁摘後・ステロイドパルス終了後の血中および尿中のバイオマーカー(糖鎖異常IgA1、糖鎖異常IgA1特異的IgG、およびIgG-IgA免疫複合体を測定した。また、摘出された扁桃細胞を24時間培養し、培養上清中の糖鎖異常IgA1および糖鎖異常IgA1特異的IgGの産生量を測定した。尿所見異常の改善に伴い、血中糖鎖異常IgA1・糖鎖異常IgA1特異的IgG・IgA1-IgGICおよび尿中糖鎖異常IgA1値の有意な低下が認められ、扁摘パルス療法の治療効果が高い患者軍での扁桃細胞では、糖鎖異常IgA1特異的IgGの産生量が有意に高値であった。以上より、IgA腎症の病態において重要な役劃を担う糖鎖異常IgA1や糖鎖異常IgA1特異的抗体の一部は、口蓋扁桃由来であることが示唆された。血中および尿中バイオマーカーは、扁摘パルス療法の適応と治療効果判定に応用できると考えられた。
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