我々は、これまで、血管中膜の弾性層板を主成分であるエラスチンの分解と血管平滑筋細胞の形質転換の関連性に注目し、平成22年度には部分腎摘出ラットの血管石灰化部位のエラスチン分解とMMP-2(matrix metalloproteinase-2)発現の関連性を明らかにした。そこで、平成23年度は活性型ビタミンD製剤の抗炎症作用に着目し、高リンおよび炎症性サイトカインのTNF-αにて刺激した血管平滑筋細胞に対する活性型ビタミンD製剤の作用について検討した。血管平滑筋細胞は高リン(2.5 mM)およびTNF-α(10 ng/ml)添加培地による9日間の培養にて骨芽細胞様細胞への形質転換を伴って石灰化が促進した。マキサカルシトールおよびカルシトリオールは濃度依存性(10-7~10-9 M)にこの石灰化を抑制した。また高PおよびTNF-α刺激により血管平滑筋細胞のMMP-2遺伝子発現やMMP-2分泌が促進したが、活性型ビタミンD製剤はMMP-2を抑制し、その抑制はマキサカルシトールで顕著であった。以上より、高リンおよびTNF-αによる血管平滑筋細胞の石灰化を活性型ビタミン製剤は抑制し、その抑制効果にはMMP-2阻害が関与していることが示唆された。平成24年度はLPSを投与し、全身性炎症を惹起させた部分腎摘出ラットに活性型ビタミンD製剤を投与した際の血管病変への変化を検討した。ラット大動脈の動脈硬化性変化(リモデリング)は炎症により促進した。マキサカルシトールは血中ミネラル濃度の上昇をきたすことなく、ラット大動脈平滑筋細胞の増殖や大動脈壁厚の上昇を抑制したことから、血管壁のリモデリングを抑制する知見が得られた。今度、この血管壁リモデリング抑制効果の機序の解明を計画している。
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