パーキンソン病は、中脳黒質のドーパミン神経が変性・脱落することによって、運動障害が発症する疾患である。ドーパミン神経の変性は、諸説あるが酸化ストレスによるとの報告がある。DJ-1は癌遺伝子産物として報告され、後にその変異によりパーキンソン病を引き起こすことが示されている。さらにDJ-1は酸化ストレスを防御する遺伝子群のマスター転写因子であるNrf2の安定性を促進することが示されている。我々のグループでは、創薬を目的にDJ-1に結合する化合物として同定したcompound Bが酸化ストレスによる神経細胞死を抑制することを報告している。そこでcompound Bの神経細胞死を抑制機構の解明を行った。酸化ストレス応答配列をルシフェラーゼ遺伝子の上流に連結したレポーター遺伝子を細胞に導入してNrf2転写活性化能を検討したところ、過酸化水素による処理単独より、過酸化水素とcompound Bの添加により増加することが示された。この反応はNrf2タンパク質を安定化し、発現量を増加させることにより引き起こされることが明らかとなった。さらに、この安定化作用をのメカニズムを検討したところ、DJ-1はPTENの酵素活性を抑制することに注目して検討した。その結果、PTEN抑制作用は酸化ストレスによりDJ-1の酸化修飾されることで抑制されること、さらにcompound Bにより、DJ-1の酸化が抑制され、PTENの阻害作用が持続することが示された。
|