研究概要 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は原因不明で治療法が無い難病である。近年Fused in Sarcoma(FUS)遺伝子異常を持つ家族性ALSが報告され、当科の家族性ALS症例でもFUS異常を3家系で見出した。自験例の大家系は5剖検例を含み、それら剖検例における細胞内封入体を含めた詳細な臨床病理学的解析は運動ニューロン病全体の病態解明に重要な意義を持つ。FUS変異が運動ニューロン死を引き起こすメカニズムは明らかになっていない。本研究では、自験の大家系について各症例の臨床像を検査・画像所見を含めてより詳細に明らかにし、臨床経過を完全に把握する。剖検病理標本を詳細に検討することで好塩基性封入体の分布や頻度、病期との相関について検討する。さらに凍結保存された脳・脊髄を用いての解析も可能である。具体的にはFUSのRNA代謝という機能面に注目してFUS異常ALS患者のR521C異常を持つ大家系を含めた発症者全員に関する臨床情報を解析し遺伝子異常を持つ患者の特徴をより一層明らかにする。 平成22年度はFUS異常ALS患者の脳・脊髄病理標本を対象とし、特に好塩基性封入体の病態・病期との関わりに注目し封入体の分布や頻度を解析し病態における意義を明らかにした。形態学的解析に加えてTDP-43やFUSを用いた免疫組織化学的検討も行った。発症後1,3,9年目の剖検例では病初期には脊髄に加え黒質の変性が強く、病期を追うごとに変性・封入体の存在領域の拡大を認めた。平成23年度は免疫染色での検討も加え、同一家系における病態の進行について論文にまとめ、投稿した。
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