研究概要 |
アラキドン酸(ARA)は必須脂肪酸の1つであり、生体内では細胞膜構成因子として多く存在し、様々な生理活性を有することが知られている。脳血管性認知症ではARA代謝の異常が報告されていることから、正常なARAの代謝が認知機能の維持に重要であることが示唆されるが、その分子機序についてはほとんど明らかにされていない。本年度は、これまでの報告に基づいて、行動解析システム(新規物体認識テスト・放射状迷路テスト)および免疫組織解析システム(活性化グリア細胞GFAP,Iba-1,Musashi-1・軸索損傷APP・髄鞘染色MBP)を導入することにより、脳血管性認知症モデル動物を評価することが可能になった。さらに、脳血管性認知症の病態における脂肪酸結合タンパク質の役割を解明するために、脂肪酸結合蛋白質Fabp5,7の発現を免疫組織学的に評価することが可能になった。現在、野生型マウス(C57BL6/J,オス,12週齢)および脂肪酸結合タンパク質Fabp5,7ノックアウトマウス(Fabp5,7KO)に対して、偽手術もしくは右側総頸動脈永久結紮手術(以下、結紮手術)を施し、皮質下白質領域(線条体および脳梁)における脂肪酸結合タンパク質Fabp5,7の発現解析および炎症反応、白質病変等について免疫組織学的解析により検討する予定である。これまでに、野生型およびFabp5,7KOマウスにおいて、結紮手術による神経学的変化および体重変化を認めないことが確認されている。
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