研究概要 |
アラキドン酸は必須脂肪酸の1つであり、生体内では細胞膜構成因子として多く存在し、様々な生理活性を有することが知られている。脳血管性認知症ではARA代謝の異常が報告されていることから、正常なARAの代謝が認知機能の維持に重要であることが示唆されるが、その分子機序についてはほとんど明らかにされていない。本年度は、野生型マウスに対して偽手術ないし右側総頸動脈永久結紮手術(以下、結紮手術)を施し、結紮手術後1,2,4週間後のFabp7の発現を脳梁・線条体において検討した。その結果、いずれの領域においてもFabp7陽性細胞数およびその分布に関して、偽手術群と結紮手術群との間に顕著な変化は認められなかった。さらに、Fabp7陽性細胞のほとんどすべてがPDGFRα陽性のオリゴデンドロサイト前駆細胞であり、その割合も偽手術群と結紮手術群との間でほとんど変わらなかった。結紮手術後の時間経過に伴うFabp7陽性細胞数およびその分布に大きな違いは認められなかった。また、脳血管性認知症の病態におけるFabp7の機能を明らかにするために、野生型およびFabp7ノックアウトマウスに対して偽手術ないし結紮手術を施した。現在、これらのサンプルの組織学的解析を進めているところである。
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