脊髄小脳変性症Spinocerebellar Ataxia(SCA)は、およそ60%は弧発性、30-40%は優性遺伝性、数%が劣性遺伝性である。劣性型のうち欧米で頻度の高いFriedreich失調症は本邦での報告はなく、Ataxia with Oculomotor Apraxiaの責任遺伝子、AprataxinやSenataxinの変異などが散見される程度で遺伝的背景が異なることが分かっている。劣性型SCAは一般的に優性型SCAに比し、若年発症で末梢神経障害や錐体外路症状等の神経症状を伴うことも多い。今回、50~60歳前後で発症した高年発症SCAの劣性遺伝性家系3例を経験した。この家系を用いて連鎖解析を行いてホモ接合性マッピングにより遺伝子局在部位を明らかにし、責任遺伝子単離を行うことを目的して研究を開始した。平成22年度の1年間では、3家系ともホモ接合性マッピングを完了し、1家系においては次世代シーケンサーを用いた遺伝子変異同定を行い、責任遺伝子変異の候補を同定した。正常コントロール576アレルにおいて、その変異が認められないことを確認した。 さらに候補遺伝子の野生型、変異型を培養細胞に強制発現させると、野生型と変異型で明らかに細胞内局在が変化することを確認した。また、候補遺伝子産物に対するポリクローナル抗体を作成し、免疫染色を行ったところ、候補遺伝子産物が小脳Purkinje細胞に発現していることを確認した。以上の結果から今回同定した遺伝子変異は病的である可能性が非常に高いことが確認できた。劣性型SCA1家系において責任遺伝子を同定できたと考えられるため、現在上述の内容の論文を作成し、投稿準備中である。
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