平成22年度は、健常被験者に対して、手指運動強化課題によって誘導される内因性ドパミン量と運動皮質の脳可塑性をそれぞれ非侵襲的脳機能研究法である[^<11>C]-ラクロプライドPETと経頭蓋的磁気刺激法(TMS)を用いて多面的に評価する新たな手法を確立した。 具体的には、1)ラクロプライドPETを用いた評価では、手指運動強化課題中に、大脳基底核(特に線条体)に内因性ドパミンが誘導されるかをドパミンD2受容体の可逆性アンタゴニストであるラクロプライドBinding Potential ; BP変化量として定量化した。その結果、健常被験者では、手指運動強化課題により非効き手である左手指の運動機能が強化されると同時に、右(対側)線条体に内因性ドパミンが放出されることが証明された。2)TMSを用いた大脳一次運動野の脳可塑性の評価では、大脳一次運動野にTMSを与え、運動皮質の脳可塑性をMotor evoked potential ; MEP変化率で指標化した。さらに、手指運動強化課題による運動強化率と、運動皮質の脳可塑性が相関することが証明された。 以上より、ヒトの運動強化に線条体のドパミンが重要な役割を果たすことが証明され、さらに、それが運動皮質の脳可塑性と関連している可能性が示唆された。
|