研究概要 |
本研究はグリア線維酸性タンパク(GFAP)遺伝子の変異により異常な凝集体が星状膠細胞にみとめられる神経変性疾患であるアレキサンダー病の病態モデルの作成および機能解析により病態解明、治療法開発を目的としている。平成22年度は培養細胞モデルを用いた変異GFAPの機能解析とショウジョウバエモデルの作成とこれを用いた機能解析を行い、最終的にはターゲットを定め治療法を開発することを目的とした。培養細胞モデルを用いた機能解析については予備実験が終了した段階である。ショウジョウバエモデルの作成の成果について以下に述べる。本施設の解析で用いてきたヒト野生型と変異CFAP(R239C・R416W)を緑蛍光蛋白をタグとしてショウジョウバエで過剰発現させるためGAL4結合配列をプロモーターに持つTFWベクターヘクローニングした。野生型または変異型ベクターをショウジョウバエ受精卵へ微量注入し,P因子法により,遺伝子導入ショウジョウバエ系統(Tg-D^<GFAP>)を作製した。次に複眼特異的に発現を制御できるGAL4ドライバー系統と交配させることにより,複眼原基でのGFAPの発現および複眼表現型を解析した。その結果、変異GFAP導入ショウジョウバエでは複眼構造の乱れがみとめられた。さらに蛍光顕微鏡によりすべての系統で複眼原基にGFAPの発現を確認したが、変異GFAP導入群の複眼原基には凝集体がみとめられ、病理学的にアレキサンダー病で認められるローゼンタル線維に一致する構造物である可能性が示唆された。ショウジョウバエはヒトと生物学的仕組みに大きな差異がなく、世代が短い、染色体数が少ない、子供の数が多い、飼いやすいなどのメリットが多く、平成23年度に行う予定である薬物スクリーニングにより治療法の開発につながることが期待できる。
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