研究概要 |
本年度は変異(GFAP導入グリア細胞モデルおよび患者DNAを用いて修飾因子の検索を行い、その修飾因子のグリア細胞に対する役割を明らかにすることを計画した。アストロサイトーマのcell lineに変異GFAP(V87G,R88C,R416W)を導入して施行したDNAチップ解析ではproteoIipid protein1やS100Bの発現量減少、R416WではαBクリスタリンの発現量増加が認められた(αBクリスタリンについてはGFAP凝集抑制に働く重要な因子としてすでに報告がある)。また、GFAPの発現量増加のみでもGFAP異常凝集が生じることから、GFAP遺伝子の重複の有無についてリアルタイムPCRを用いて患者DNAのGFAP遺伝子量を検討したが、患者群と対照群にて有意な差は認めなかった。GFAP転写開始250bp上流のプロモーター遺伝子多型のうち、Aアレルではactivator protein-1結合部位が新たに発現することによりGFAP発現量が変化することが報告されているが、われわれは患者検体でプロモーター遺伝子解析を行い、臨床経過と比較検討した。結果、重症例ではC/Cアレルを有する傾向が示され、プロモーター遺伝子多型が変異GFAPをもつアレキサンダー病の修飾因子の一つである可能性が示唆された。本研究成果より分子シャペロンやGFAP凝集体そのものが治療標的になりうることを示したことが示された。なお、今後の研究の展開としては、最近のアストロサイトに関する知見から、培養細胞を用いた修飾因子の検討を行うに際してアストロサイト単独でなく、ニューロンや血管などとの相互作用を含めた検討を行うことで病態解明を試みる。
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