研究概要 |
「自己貪食空胞性ミオパチー(AVM)」は病理学的に極めて特徴的な自己貪食空胞を有する稀少な筋疾患で、根治療法はない。発症機序として、生体防御の機構であるオートファジーの関与が疑われるが、依然原因不明である。本疾患の空胞には、1)1次性リソソーム異常によるDanon病を代表とする筋鞘膜の性質をもつ自己貪食空胞、2)2次性リソソーム異常による縁取り空胞(RV)、がある。筋組織での自己貪食空胞の特徴を明らかにするため、平成22年度は、Danon病とRVを伴う遠位型ミオパチー(DMRV)のヒト生検筋と「DMRVモデルマウス」で、TDP-43発現を検討した。TDP-43はユビキチン陽性封入体を有する前頭側頭葉変性症(FTLD-U)で同定され、DMRVと同様に遺伝性封入体筋症を伴うFTLD-Uの筋組織でも確認された。本研究の結果、Danon病例では、自己貪食空胞と一致してTDP-43の発現を認め、一部ユビキチンと共局在していた。DMRV例では、細胞質とRVでユビキチンと共局在し、一部はリン酸化neurofilamentと局在した。ウェスタンブロット解析で、FTLD-Uの脳組織と同様、43kDaとより高分子のバンドを認めた。DMRVモデルマウスでは成長に伴いTDP-43の蓄積を認めた。以上から、AVMは中枢神経でのTDP-43発現を示す疾患群と共通の病態基盤を有する可能性が示唆された。また、エンドソームの膜輸送関連蛋白ESCRTの研究(Filimonenko M, 2007)から、オートファジー障害とTDP-43の蓄積との関連性が推測されており、TDP-43と自己貪食空胞形成との関与の可能性が疑われた。今後は、AVM患者(Danon病、DMRV)と各モデルマウスの生検筋を用いて、リソソーム・エンドソーム経路およびオートファジー機構に関与する物質の局在・機能について筋病理学的検討を行う。
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