研究概要 |
本年度(~平成24年3月31日)の研究実施計画 本研究では耐糖能異常と若年性パーキンソン病(ARJP)の一つであるPARK2(parkin遺伝子異常)が膵臓β細胞からのinsulin分泌障害と神経細胞におけるdopamine分泌障害という類似する機構の障害から起因することより、insulin分泌、dopamine放出機構におけるparkinの機能を模索し、また、insulin分泌不全から起こる、PARK2と露尿病の合併の有無を検討した。 研究代表者江口は平成22年度までに、PC12細胞、MEF細胞、初代膵β細胞において、全反射顕微鏡(以下TIRFM)を用いることで、parkin遺伝子の発現の有無により、細胞膜直下の細胞骨格蛋白であるseptin,actinの重合化を確認した。細胞骨格蛋白は放出機構に重要な蛋白であり、TIRFを用いた解析にてインスリン分泌能の低下を確認した.この変化はprakin欠損mouseのβ細胞に野生型parkinを再発現させることで回復された。Mouseのbrainにおいては、parkin遺伝子の発現の有無により放出機構調整蛋白であるSNARE蛋白(syntaxin1)とseptin,actinの結合に有意な差が認められ、放出が阻害されている可能性が示唆された。H23年度には、parkin遺伝子がseptinやactinなどの細胞骨格蛋白の重合化に与えるという結果から、parkin遺伝子の有無による細胞骨格蛋白の神経細胞の放出、形態、特に神経突起へ与える影響を検討した。parkin欠損mouseの初代培養皮質細胞を用いて神経細胞体や神経突起内のactinの凝集の亢進を認めた。OGTTによるparkin欠損マウスの耐糖能、insulin分泌能を検討したところ、parkin欠損マウスでは耐糖能の有意な低下が認められた。以上よりparkin遺伝子異常は膵臓β細胞や神経細胞において細胞骨格蛋白の形態異常を引き起こし、insulin分泌不全、神経伝達障害を来すことが考えられた。PARK2患者は糖尿病を合併しやすい可能性が考えられた。
|