筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動ニューロンが細胞死に陥る病気であり、マイクログリアが運動ニューロン死に関与しているが、その機序は未解明である。ALSのモデルマウスである変異SOD1トランスジェニックマウスでの変異SOD1発現マイクログリアの毒性が報告されている。その機序として、frustrated phagocytosisの状態から、過剰なサイトカインやReactive Oxygen Speciesを放出している、という仮説に基づきマイクログリアの主要機能である貪食機能の評価を目標とした。最初に、SOD1マウスの脊髄病巣におけるマイクログリアの挙動を免疫染色にて評価した。G85R変異SOD1トランスジェニックマウス発症期の脊髄の免疫染色から、マイクログリアがSOD1凝集体を細胞内に取り込んでいる、もしくは取り囲んでいる像を得た。このことは、マイクログリアが完全にSOD1凝集物を消化しきれていない、frustrated phagocytosisの状態を反映している可能性が考えられた。次に、蛍光ビーズを用いたFlow Cytometryによるマイクログリアの貪食能の測定系を確立した。その測定系から、初代培養マイクログリア>HEK293T>初代培養アストロサイト=NSC34の順に1umの大きさのビーズの貪食作用が強いことが判明した。次に表面に変異SOD1をコートしない通常のビーズに対する取り込み能力を評価したが、特に変異SOD1発現マイクログリアと野生型マイクログリアでは変化を認めなかった。次年度に向け、孤発性ALS患者脊髄をサンプルとして、マイクロアレイを用いてmRNAの発現解析を行い、マイクログリアにおいて異常に変動している分子を検索中である。
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