研究課題
本研究において、研究代表者らはTSPOの発現の低いミクログリアとTSPOの発現が高いミクログリア細胞株をADモデルマウス(APP23)に脳内移植したところ、TSPOの発現の低いミクログリアはモデルマウスの脳内アミロイド沈着を除去する「善玉」であることが明らかになった。これに対して、TSPOの発現の高いミクログリアはむしろアミロイド病理を悪化させた「悪玉」ミクログリアであることが明らかになった。その原因を調べた結果、「悪玉」ミクログリアから分泌されるサイトカインMCP-1に起因する可能性があることに突き止めた。その実験的根拠として、1.アミロイド病理を悪化したミクログリア細胞株にMCP-1の発現がアミロイド病理を改善したミクログリア細胞株に比べ、約1000倍と異常に高い。2.表面プラズモン共鳴を利用して分子間相互作用を調べた結果、MCP-1はアミロイド分子との相互作用が確認された。3.抗MCP-1抗体(研究代表者ら独自に開発したもの)をもちいたAD死後脳及びモデルマウスの摘出脳の染色により、MCP-1はアミロイド沈着斑と位置的に一致した。MCP-1がADの治療ターゲットになりうるかどうかを調べるため、研究代表者は以前抗アミロイド抗体を用いるワクチン療法に施した際に、ミクログリアが抗体によって活性化された時にTSPOが上昇したことに注目し、TSPOの発現が高いミクログリアからMCP-1が大量に分泌され、抗アミロイド治療効果が一部妨害されることではないかと考え、抗MCP-1抗体を併用することにした。アミロイド沈着、そしてTSPO発現をPETプローブで経時的にモニタリングした結果、抗アミロイド抗体単独治療に比べ、抗MCP-1抗体と併用した場合、治療効果の持続時間が延長され、神経炎症の指標であるTSPOの発現も抑制された。このことから、MCP-1の機能を抑制することで、ADの中枢病理を軽減することができることが示唆された。
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