レヴィ小体型認知症(DLB)はアルツハイマー病(AD)に次いで多い変性性認知症であり、ADやパーキンソン病(PD)とならび、医学的にも社会的にも最も重要な疾患の一つである。適切な治療やケアを行う上で、DLBとADの鑑別を厳密に行うことが重要だが、DLBの診断基準は特異度は95%以上と高いが、感度は32%と極めて低い。これまで我々は、アセチルコリンの類似体に11Cを標識した[11C]MP4A・[11C]MP4Pを開発し、陽電子放射断層撮影法(PET)による脳内アセチルコリンエステラーゼ(AChE)活性測定法を確立し、本法のADやPDなどの疾患の病態評価における有用性を示してきた。我々はDLBにおいては、広範で重度な脳内コリン神経系の障害を認めること、さらに脳内コリン神経系の障害の程度は従来報告されているADにおける障害よりも重度であること、を報告した。しかし、PETによる脳内コリン神経系の機能評価が、両疾患の鑑別にどの程度有用であるかは明らかでない。本研究の目的は、ADとDLBにおける脳内コリン神経系の障害の程度および広がりの差異を把握し、PETを用いた脳内AChE活性評価による両者の鑑別診断法を開発することである。 平成24年度は前年度に引き続き、DLB、AD、健常高齢者を対象にPET及びMRI検査、神経学的評価、認知機能評価を行い、PETの動態解析などを行った。その結果、DLBにおいては脳内のいずれの部位でもADより重度で広範な脳内コリン神経系の障害を認めること、楔前部におけるAChE活性値を指標とすると両者を最も良好に弁別できること、認知機能障害が軽度な症例においても同鑑別診断方法が有効であることを示した。一連の研究で、当初の目的である脳内コリン神経系の機能評価による両者の鑑別診断法を確立した。研究成果は国内外で学会発表、招待講演を行い、現在論文投稿作業を行っている。
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