研究概要 |
筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis ; ALS)は、運動ニューロンの変性・脱落を特徴とする致死的な運動神経変性疾患であり、現在のところALS発症の分子メカニズムは不明な点が多く残されている。家族性ALSの約20%はsuperoxide dismutase 1(SOD1)の変異によって発症する。野生型SOD1は生体内で安定したhomodimerとして存在することがわかっている。我々は以前、変異型SOD1蛋白質がtubulinを含む様々な蛋白質と結合するのに対し、野生型SOD1はこれらの蛋白質に結合しないこと、またin vitroで変異型SOD1はtubulinの重合を阻害することを報告した。我々や国内外の研究結果から、変異型SOD1は他の様々な蛋白質と結合することにより結合蛋白質の機能を阻害し、毒性を発揮することがわかってきた。今年度我々は、他のALS関連蛋白質であるTDP-43も変異型SOD1と結合することを見出し報告した(Neurochem. Int. 57,2010,906-913)。また、変異型SOD1結合蛋白質の多くはSOD1の1-23アミノ酸部分に結合することを明らかにした。1-23アミノ酸部分はSOD1 dimer interfaceを含むことから、変異型SOD1の異常な蛋白質結合は主にmonomer化した変異型SOD1を介していると考えられた。変異型SOD1の一部は生体内でmonomerとして存在しているという報告を考え合わせると、変異型SOD1のmonomer化はSOD1関連ALSにおける神経変性メカニズムの根底にありまた治療の分子標的となることが示唆された。
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