研究概要 |
これまで筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の大部分を占める孤発性ALSの発症原因は長らく不明であったが、最近、孤発性ALSで凝集・蓄積している蛋白質としてTDP-43が同定され、さらにTDP-43の遺伝子変異が多くの家族性ALS家系で発見された。しかし、その発症分子メカニズムは全く未解明である。本研究ではTDP-43を発現するALSモデルショウジョウバエを樹立し、ALS発症分子メカニズムの解明、治療薬候補化合物の検索を目指す。 昨年度までの研究で樹立した神経変性・神経症状を呈するALSモデルショウジョウバエを用いて候補遺伝子スクリーニングを行い、オートファジー・リソソーム蛋白質分解系関連遺伝子であるAtg6,Atg12を含む複数の遺伝子を同定した。Atg6,Atg12遺伝子をRNAi法によりノックダウンさせると、ALSモデルショウジョウバエが呈する複眼変性が増悪した。さらにユビキチン化蛋白質選択的なオートファジー分解に関与するp62のノックダウンにおいてもALSモデルショウジョウバエが呈する複眼変性が増悪した。今後、選択的オートファジー活性の低下によりTDP-43蛋白質が蓄積しTDP-43毒性が増悪したのか、あるいはユビキチン化蛋白質の蓄積により二次的にTDP-43毒性が増悪したのか検討する必要がある。何れにしても本研究からTDP-43のin vivoでの毒性獲得にオートファジーが関与している可能性が示され、オートファジーの賦活化によるALS治療が期待された。
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