解糖系は癌、免疫疾患、糖尿病など多くの疾患で重要な役割を果たすエネルギー産生機構であるが、その制御機構は未だ不明な点が多い。そこで本研究ではゲノムワイドsiRNAライブラリーを用いて新規解糖系制御遺伝子のスクリーニングを行った。 H22年度に実施したスクリーニング、および検証実験の結果、酸素依存性の細胞性増殖に関わる遺伝子13個、解糖系阻害剤2DG存在下での細胞増殖に関わる遺伝子7個を同定した。この中で酸素依存性細胞増殖に関わる遺伝子1個は酸素依存性増殖に関して既知のものであったが、残りの19遺伝子については新規の遺伝子であった。またこれら19遺伝子間のパスウェイ解析、gene ontology解析を行った結果、RNA代謝に関わる遺伝子が6個見出された他は、特定の機能やパスウェイに偏ることはなく、さまざまな細胞機能と解糖系が関わることが示唆された。 この19遺伝子の中から、機能の全くわかっていないある遺伝子に着目して解析を行った結果、この遺伝子は解糖系とミトコンドリアでの酸化的リン酸化のバランスに重要な役割を果たすPDK1のユビキチンリガーゼとして機能することが明らかとなった。この遺伝子をRNAiで発現低下させることにより癌細胞は通常酸素下で解糖系を用いた代謝をより行うようになった。またこの遺伝子を発現低下させた癌細胞は軟寒天培地でのコロニー形成能が低下し、ヌードマウス皮下での造腫瘍能が著しく低下することが明らかとなった。この研究結果をまとめた論文を現在投稿準備中である。
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