解糖系は癌、免疫疾患、糖尿病など多くの疾患で重要な役割を果たすエネルギー産生機構であるが、その制御機構は未だ不明な点が多い。そこで本研究ではゲノムワイドsiRNAライブラリーを用いて新規解糖系制御遺伝子のスクリーニングを行った。 H23年度では、H22年度に同定した19の新規解糖系制御遺伝子についてがん細胞とマクロファージにおける役割について解析を行った。その結果、分子Aはがん細胞において足場非依存状態でのエネルギー代謝に重要な役割を果たしていることが明らかとなり、分子Aをノックダウンすることでin vivoでのがん細胞の増殖を制御することが明らかとなった(論文投稿中)。また分子Bは、エネルギー飢餓環境でのがん細胞の増殖・生存を制御していることが明らかとなり、この分子を抑制することで造腫瘍能が著しく低下することが明らかとなった(投稿準備中)。一方マクロファージにおいては、分子Cが解糖系を介したエネルギー産生と運動能、サイトカイン産生能などの細胞機能に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。 本研究では全研究期間を通じて、ゲノムワイドsiRNAライブラリーを用いることで新たな解糖系制御分子の網羅的同定に成功し、新たな解糖系制御のメカニズムが明らかとなった。またこれら新規解糖系制御分子ががん細胞やマクロファージで重要な役割を果たしていることが明らかとなった。今後これらの知見を基にさらなる研究を展開することによって、解糖系制御機構を利用した疾患治療への応用が期待される。
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