研究概要 |
摂食が肝臓において小胞体ストレスを惹起する機序について、タンパク合成を促進するシグナルであるインスリンとタンパク摂取に着目した。まずSterptozotocin(STZ)投与によってインスリン分泌を枯渇させたマウスでは、摂食時に誘導される小胞体ストレスが低下していた。同様に野生型マウスに無タンパク食にて再摂食を行なった場合も、同様に摂食時の小胞体ストレスの誘導が低下していた。更にSTZ投与マウスに無タンパク食を与えると、低下していた小胞体ストレスの誘導が更に低下した。このことからインスリンシグナルとタンパク摂取の双方が、タンパク合成促進を介して小胞体ストレスを惹起するものと考えられた。 一方Sdf211の発現調節に関しては、既に見出していた転写誘導に必須の領域が、ATF6のみならずXbp1によっても認識されることが明らかになった。すなわち、培養細胞系にてATF6やXbp1の活性型を過剰発現させたところ、Sdf211のプロモーター活性が増加したが、転写に必須の11塩基を欠失させると、このような反応は消失した。更に野生型マウスの肝臓で、両転写因子とプロモーター領域の結合をChIPアッセイで解析したところ、ATF6,Xbp1のいずれもプロモーター領域との結合が摂食によって増加した。このことからSdf211は、小胞体ストレスによってATF6とXbp1を介し、転写レベルで調節を受けるが、その認識配列は新規のものである可能性が示唆された。 更に肝臓特異的Sdf211欠損マウスの作製に向け、Sdf211-floxedマウスを作製中であり、germ-line transmissionの確認された仔体を用い、現在ネオマイシン耐性遺伝子の除去を進めている。
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