平成23年度は、高ショ糖食による耐糖能障害をインクレチン関連薬が改善するかを中心に研究を進めた。 1、C57BL6マウスに5週間の38.5%高スターチ食を与えた群(CS群)を含めた3群間で耐糖能に及ぼす影響について比較した。CS群ではHSD群で認められた糖負荷試験時のGLP-1分泌低下や肝臓でのグルコキナーゼ発現低下ならびに耐糖能障害は認められなかった。このことは、ブドウ糖ではなく、果糖の慢性投与がGLP-1分泌低下や肝臓でのグルコキナーゼ発現低下に関与していることを示している。 2、GLP-1アナログ製剤であるEx-4を前投与し糖負荷試験時にHSD群で見られた耐糖能障害ならびに肝臓でのグルコーゲンの貯蓄障害が改善されるかどうかを検討した。Ex-4前投与により糖負荷試験時のインスリン過剰分泌により耐糖能は改善したが、肝臓のグリコーゲン貯蓄障害は改善されなかった。 3、C57BL6マウスに通常食群を15週間与えた群(CD群)、ならびに38.5%高ショ糖食を与えた群(HSD群)ならびに15週間の高ショ糖食に加えて後半の10週間DPP-4阻害剤を飲水させた(HSD+DPP群)の3群で耐糖能を評価した。短期のみならず長期のHSD群でも糖負荷試験時のGLP-1分泌低下ならびに耐糖能障害が見られた。一方HSD+DPP群では、HSD群で見られた耐糖能障害は改善したが、GLP-1分泌低下は改善しなかった。DPP-4阻害薬によるインスリン分泌の亢進が耐糖能の改善に寄与すると考えられた。 これらの結果からGLP-1アナログ製剤やDPP-4阻害薬は、高ショ糖食による耐糖能障害の発症機序とは異なった機序を改善することが示唆された。
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